それから、私と琢磨は距離を置いた。


今まで仲良かったから周りは不思議がったけど、ケンカしてることにした。


紗依子が言うには、琢磨にケンカの原因を聞けば“俺が悪い”と言うらしい。


私は“私が勝手に怒ってるだけ”と答える。


事情を知っている紗依子は、特に何も言わなかった。


それは貴文くんも一緒で。


気付いてるっていうか、予想出来てるんだと思う。


何も知らない遥と淳くんは“おかしな二人”と言う。


私と琢磨が距離を置いてしまったせいか、男女別々に行動することが多くなった。



──もらったピアスはまだ、紙袋の中。



「真央さ、それってファーストピアスでしょ? いつまでしてんの?」

昼休み、食堂でカレーをつつきながら遥が言った。


「……バイト代入ったら、買おうと思ってたんだけど、ね……」


いつになるか、わからない。

実現するのかもわからないけど。

もし、琢磨と今まで通りに戻れたら、先生に気持ちを伝えようと思っていた。

それから、もらったピアスをしようって。



「バイト代って……もう入ったでしょ?」

「そうなん、だけどね」

それまで、他のピアスをするのは気が引けていた。


違うピアスをして、気持ちがないんだって勘違いされたくなかったから。




季節はすっかり夏になり、もうすぐ……。

「そういえば、真央、誕生日もうすぐじゃん?」

そう。

もうすぐ誕生日がやって来る。



初めて、一人で過ごす誕生日──……。