紗依子と彼は、最初から先生と生徒だったけど、私と先生は……。



「一応講師と塾生の恋愛は禁止でね」

「そうなの?」


「まぁ……勉強する場なわけだし? でも、講師なんてほとんど大学生だし、そうなることも結構あるみたいで」


紗依子は氷が溶けて薄くなったコーヒーをストローでかき回した。


「受験終わったら告白しようって思ってたの。ダメもとでね。そしたら、彼も同じこと思ってたみたいで……ね」

「そうなんだ」


紗依子と彼、今は普通の外でデート出来る。

でも、もし私が先生と付き合うことになっても、外でデートしたりは出来ないんだよね、きっと。



「紗依子は今は、普通にデート出来るんだよね?」

「そう、だね」


それって、私は耐えられるの?


「もしさ、普通にデート出来ないような人だったとしても、付き合った?」


紗依子は質問の意味を探るように私の顔を見つめていた。


……もう、例え話じゃなくなってるのはわかってた。


紗依子は相手が“先生”だって、もしかしたら気付いてるかもしれない。