「あれ? 遥は?」

職員室から戻ってくると、遥の席は空っぽだった。


テストが終わり部活も再開されて、教室に残っている人は少なかった。


私は無事、赤点を取ることはなかった。

ま、どれかが飛び抜けてってこともなく、平均点だったけど。



「何か用があるって帰ったよ」

「そっか」

「真央は? 帰んないの?」

「……紗依子! 今日、時間ある?」

思わず紗依子の腕を掴んだ。



「彼と待ち合わせしてるけど……どうしたの?」

「あ、なら……いいや」


それを聞いて、掴んでいた手をパッと離した。


紗依子に話し、聞いてもらおうと思ったんだけど。

彼氏とのデート、邪魔しちゃダメだよね。



「……何か話、あるんでしょ?」

「でも、いいよ。また今度で」


先生のことも、琢磨のことも、誰かに聞いてもらいたかった。


誰かに答えを出してもらおうなんて思ってるわけじゃないけど。



「真央。ホントにいいの?」

「うん……」



笑って誤魔化した……つもりだった。