静かな道を二人共黙ったままで歩いていた。
──微妙に距離を開けて。
「さっきは、悪かった」
少し前を歩いていた琢磨が、背中を向けたままぽつりと呟いた。
「……ううん」
──また訪れる沈黙。
琢磨とは、ずっと友達でいたい。
そう思う私は、自分勝手なのかな……。
「お前、いるんだろ? 好きなやつ」
「…………」
何て返事したらいいか、わからなかった。
──頭に浮かんだアイツ。
だけど、好きなのかどうか、まだわからない。
黙ったまま歩いていたら、駅前の灯りが見えてきた。
「考えてみて、俺のこと」
ちゃんとした返事は……出来なかった。
でもちゃんと考えて、答え出さなくちゃいけない。
琢磨のこともそうだけど、──アイツのことも。
「ちゃんと勉強しろよ」
琢磨はそう言って私の頭をくしゃっと撫でると、今来た道を戻っていった。
小さくなっていく、琢磨の大きな背中を見送った。
中学の時は少ししか違わなかったのに、いつの間にあんなに大きくなったんだろう。
琢磨は、いつから私のこと──……。