「……ごめん」
バツの悪い顔をして私から離れた琢磨は、そのまま背中を向けた。
「おばさんの……手伝い、してくるっ」
私は逃げるようにして琢磨の部屋を出た。
閉めたドアに背中をつけて、大きく息を吐き出す。
「どうして……」
掴まれた手首は、少し赤くなっていた。
それが、琢磨の思いの強さを表しているように見えて、胸が苦しくなった。
「手伝わなくてもいいのに」
「でも、これからは料理もしなきゃいけないし」
そう言いながら一緒にキッチンに立っていた。
ホントは琢磨と顔合わせづらいけど、今帰ったら絶対おばさんに疑われる。
琢磨がおばさんに責められるのはかわいそうだと思ったから、最初の目的通り、夕飯をごちそうになることにした。
おばさんの料理は相変わらずおいしくて、ホントに作る時のポイントなんかも教えてもらって勉強になった。
「また来てね」
「はい」
夕食が終わって、琢磨と二人で家を出た。
送ってもらうのも気まずいけど、おばさんが強く言うし、琢磨も最初からそのつもりだったみたい。

