「ずっと言おうと思ってたけど、お前の家、あんなことあって……。最近はまた昔みたいに笑うようになったから、言ってもいいかなって思ってて」

「ちょっと、待ってよ……」


「だからキスした。あの時」


近付いてくる琢磨を押し返そうと伸ばした腕をあっさり掴まれて、

そしてそのまま、琢磨の胸に引き寄せられた。


「待って……!」


こんな風に琢磨に抱き締められたのは初めてで。

どうしたらいいかわからない。

力強い腕に、身動きが取れなかった。


「好きなんだ」


すぐ近くで琢磨の声がする。


「ずっと前から」


琢磨のこんな声を聞いたのも初めてだった。


「琢磨……まっ……」


最後まで言うよりも先に、体が離れたと思ったら視界が回転して──フローリングに押し倒された。


「琢磨……!?」


真剣な表情の、“男の顔”をした琢磨がそこにいた。


「俺じゃダメか?」


手首を床に押さえつけられ、ゆっくり顔が近付いて来た。


「待って……てば」



“ただいまー”

その時、おばさんが帰って来た声が聞こえて、ふっと手首を押さえられていた力が抜けた。