「いらっしゃーい!」
「おじゃまします」
久しぶりに入った琢磨の家。
中学の頃は良く来てたっけ。
お母さんとおばさんがリビングでおしゃべりしてて。
私と琢磨はその横でゲームしたり、たまにだけど勉強も。
「夕食、期待しててね」
「ありがとうございます」
「上でテスト勉強するから」
「ヘンなことしちゃダメよ」
「……バカじゃねーの」
あは……。
おばさんには別の意味でも好かれてるみたいで。
“うちのお嫁さんに来てくれればいいのに”なんて言われたこともあったっけ。
いわゆる“ビミョーなお年頃”だった私達はお互いムキになって否定し合って、ケンカしたこともあったな。
「ダメだよ、おばさんにあんなこと言っちゃ」
階段を上がる琢磨の背中に声を掛けた。
「いたらいたでウザいぜ、親なんか」
「それでも……いなくなったら、寂しいよ?」
「……」
琢磨は振り返ると、何も言わずに私の頭をくしゃっと撫でた。
眉を下げて力なく笑うと、琢磨も困ったような表情で笑った。
私だって、口うるさく言う親に反発したこともあった。
それがある日突然出来なくなるなんて、その時は思ってもなかったんだから。

