「コーヒー淹れたけど、ビールにする?」


脱いだ制服を持ってリビングに行くと、煙草を咥えた先生にハンガーを渡された。


制服掛けろってことか。


見れば、先生もいつの間にか着替えていた。



「……生徒にお酒飲ませていいの?」

「まぁ、特別?」


ニッと笑って制服を掛けたハンガーを私から奪い取り、エアコンの前に掛けた。


「ちょっと寒くなるかもだけど、我慢な」

先生はソファに座っていて、私は少し離れたフローリングに直接座った。



「……お風呂、入った方が良くない?」

私よりも濡れたのに。


夏に向かおうとしてるこの時期だけど、夜はまだ肌寒い日もある。


それなのに先生は、コーヒーを飲みながら、タオルで頭を拭いているだけだった。



「目離すとお前、逃げそうだし」

「……逃げないし」

……っていうか、逃げるって何?



「そっちこそ風邪引いたら困る……から、入って……下さい」

「心配してくれてんの?」


……からかうような言い方がムカツク。


「一緒に入る?」

「なっ!? バカじゃないのっ!?」


カップを落とすかと思った。


「教師に向かってバカって、お前なぁ」

ため息をつきながらそう言うけど。


「バカだからバカって言ってんでしょ! 一緒にお風呂に入る教師と生徒がどこにいんのよっ」



「教師と生徒じゃなかったら、いいのかよ?」