親睦旅行から数週間が過ぎた。
……あれから、琢磨の態度に特に変化があるわけではなく、何事もなかったように接してくるから、こっちが拍子抜けしてしまう。
もしかして、からかわれただけ、とか……?
──キスまでしといて?
旅行が終わっても、私達は仲がいいグループとして一緒に行動することが多くなっていた。
アイツ──久我先生にも呼び出されたりすることはなく、話をしてなかった。
だから、何であんなところで私を待たせたのか、いまだに謎。
「お前、テスト勉強してんの?」
テスト前一週間は部活動が禁止になる。
そんな琢磨と一緒に駅に向かってる時だった。
「……してるよ、一応」
ついつい語尾が小さくなってしまう。
私は五月の中頃からバイトを始めていた。
学校と家の間にあるファミレスで、平日三日とたまに週末。
「うちでテスト勉強しないか?」
「え?」
「特別に俺様が教えてやる」
「何で上から目線?」
……あ、そういえばコイツ、主席入学だっけ。
「……飯、食いに来る約束したろ? 連れて来いってうるせぇんだよ」
「……そうだったね。じゃあ……明日は?」
「言っとく」
琢磨と駅で別れ、私はバイト先のファミレスに向かった。