そう言って男は背中を丸め、私の顔を覗き込んだ。


──……。


ますます意味がわからない。

今会ったばかりの女の、何が気になるんだか。


……それも、ナンパの常套句なのだろう。


「だから、もうちょっと一緒にいたいんだけど?」


──だけど。


「……意味、わかんないんだけど」

「何が?」

「私のこと、気になる……とか」


無視して帰れば良かったのに、理由を聞いたのが間違いだった。


「だって、こんな明るい場所にいるのに、消えちゃいそうな顔してるから」


「…………」

思わず目を見開いて男を見た。


消えちゃいそうな顔って……何?


「なんか、死んじゃいそうな顔してたよ?」

「…………」


この男、何言ってんの?



「だから、一緒に楽しいことしたいな、って思って」

そう言うと男は、にっこりと微笑んだ。


纏う雰囲気には合わない、柔らかな笑顔だった。




私なんて、なくなっちゃえばいいって思ってた。

だけど、こんなナンパ男に気付かれる程、顔に出てた?



「……るって」

「え?」

「……生きてるって……感じさせてくれんの?」


気が付けば、そんな言葉を口にしていた。


どうしてこの男だったんだろう。


最初に声を掛けてきたから?

それとも見透かされたから?

もう、どうでも良くなった?



一瞬驚いた様な顔をした男だったけど、

「──OK」

と言って唇の端を持ち上げた。