「あ……色々ありがとうございました」

改めてお礼を言うと、

「今日は真央ちゃんのこと見に来たのよ」

って言っておばさんは微笑んだ。


「琢磨はいいの?」

「いいのよ、あんなの」

「あんなのって……おい」


おばさんの後ろに立った琢磨は、何とも表現し難い表情でため息をついた。




「あれ? お前、耳どうした?」

「耳?」

そう言われて耳に手を当てて、思い出した。


「思い付きで……ね」

……そうだよね。


昨日の夕方会った時はなかったんだもん、びっくりするよね。




「そろそろ式、始まるんじゃないの?」

講堂と思われる場所に人が流れていくのを、おばさんが指さして言った。


「私! まだクラス確認してない!」


「お前、バカだろ……。同じクラスだったぞ、俺ら」

「えー、琢磨と同じクラスかー」


「何か文句あんのか?」

「べっつにー」


「ほらほら、遅れるわよ」


おばさんに促され、私達は言い合いをしながら講堂に向かった。




式も無事に終わって教室に入った。

私達一年生の教室は三階にある。

これから毎日三階まで上がるのか……。



「ねぇ」

自分の席に座ろうとしたら、後ろに座っていた女の子から声を掛けられた。


「きれいな髪だね。真っ直ぐで」

「そう、かな? ありがとう」


「私、都築遥。よろしくね」

「高岡真央……です」


「何で敬語? 遥でいいから。真央って呼んでいい?」

「あは……何となく。よろしくね、遥」


彼女、都築遥はきれいな栗色の長い髪をゆるく巻いていた。

ぱっちりとした大きな瞳が印象的だけど、見かけと違って性格はサバサバしていそうだった。