夕暮れで薄暗いこの時間。
マンションの入り口に人影を見付けた。
煙草を吹かしているのか、時折蛍火のようにほわんと赤く灯るのが見える。
顔の見えない相手に、無意識に足が止まった。
しばらく様子をうかがう様にしていたその時、ふわっと風が吹いて、私の元に届いた香り……。
「……っ」
懐かしい香水の香りに胸がぎゅっと締め付けられた。
私に気が付いたのか、人影がゆっくりと動き出した。
だけどその姿はもう、浮かんだ涙で揺らいでいた。
「真央」
ずっと求めてた声が、私の鼓膜を震わせた。
ジャリっと小石を踏む音がして、近付いて来た影が灯り始めた街灯に照らされた。
「……っ」
名前を呼びたいのに、喉が詰まって言葉が出ない。
「卒業、おめでとう」
顔を見ることも叶わず、気が付いた時には懐かしい香りと共に、温かい腕に包まれていた──……。
マンションの入り口に人影を見付けた。
煙草を吹かしているのか、時折蛍火のようにほわんと赤く灯るのが見える。
顔の見えない相手に、無意識に足が止まった。
しばらく様子をうかがう様にしていたその時、ふわっと風が吹いて、私の元に届いた香り……。
「……っ」
懐かしい香水の香りに胸がぎゅっと締め付けられた。
私に気が付いたのか、人影がゆっくりと動き出した。
だけどその姿はもう、浮かんだ涙で揺らいでいた。
「真央」
ずっと求めてた声が、私の鼓膜を震わせた。
ジャリっと小石を踏む音がして、近付いて来た影が灯り始めた街灯に照らされた。
「……っ」
名前を呼びたいのに、喉が詰まって言葉が出ない。
「卒業、おめでとう」
顔を見ることも叶わず、気が付いた時には懐かしい香りと共に、温かい腕に包まれていた──……。

