”ごめんな”


また聞こえた圭吾の声。


ごめんって……そういう意味だったの?



今でも圭吾の体温を覚えてる。

重なった体の重みを覚えてる。


優しいキスも、激しいキスも、肌を撫でるその手も、名前を呼ぶその声も、全部覚えてる。


「圭吾……!!」


これ以上自分を支えていられなくて、すべてがなくなった部屋の真ん中に崩れ落ちた。





「真央!」


いつ、どうやって来たのかわからないけど、気が付けば家の前だった。


マンションの前に座り込んでいた琢磨が立ち上がって、私の所に走ってきた。


「動くなっつったろ!」

「……ごめん」

「家、帰ろう」

琢磨に抱えられるようにして、部屋に入った。



「……あいつんトコ、行ったんだろ?」

黙って頷いた。


「会えたのか?」

黙って首を横に振った。


「え?」

「……いなかった。部屋、空っぽだった……」


「それって……」

琢磨の目が大きく見開かれる。


「電話! 掛けてみろよ!」

「掛けたよ! でも何度掛けても繋がらないんだよ!」


大きな声を出した途端、涙も一緒に溢れた。