琢磨の後姿が消えたのを確認して、私はその場から離れた。


早く圭吾に会いたい。

ただその一心で。





不安に押し潰されそうになりながら、圭吾のマンションへ走った。


エレベーターに乗り込み、無意味に八階のボタンを何回も押してしまう。


いつもはあっという間なのに、今日はやけに遅く感じた。



小さく開いたドアから滑るように降り、チャイムを鳴らした。


だけど、反応がない。


何回押しても、圭吾が私を迎えてくれることはなかった。


「……」


ふいにドアノブに手を掛けると──それはあっさりと回った。


「!?」


鍵の掛かっていないドアを開けると──……。



「……嘘」



乱れる呼吸を整えながら、奥に進む。




キッチンにあった私のマグカップがない。


リビングにあったソファがない。


私がよく抱えていたクッションがない。


一緒にDVDを観たテレビも、抱き合ったベッドも──何もかもがない。


部屋が空っぽだった。



「なんで……」



煙草の匂いも香水の香りも。


圭吾がここにいた証しが──何もない。



「う、そだ……」