先生の声は暗く、重苦しい物だった。

その声に何かを察したのか教室がザワつく。




「急なことだが、久我先生が退職された」



……え?



な、に、言ってるの?



その一言で教室のザワめきがさらに大きくなる。


「静かに! 一身上の都合、ということだ。突然のことで驚いていると思うが、今まで通り学業に専念するように。では出席を取る──……」



圭吾が学校を辞めたなんて嘘だ。

だって私、何も聞いてない。


今すぐ飛び出したい気持ちを必死に抑えて、時間が過ぎるのを待った。

先生の前だし、今飛び出して行けば、間違いなくまた疑われると思ったから。





「久我っちさー、急に辞めるなんて、何かおかしくない?」


学校を抜け出せないままお昼休みになり、一緒にお弁当を食べていた遥が言った。


だけど私は箸が進まない。


食堂のあちらこちらで圭吾の名前が聞こえる。


やっぱりいきなり辞めたことで、色々な憶測が飛び交っていた。



──電話はいくら掛けても繋がらないままだった。