「びっくりしたよ。もう終わった話だと思ってたから」

「あいつから何も聞いてなかったのか?」


「最近電話もメールも全然……。先に事情聞かれてたっぽいんだけど。なのに、何も言ってくれなくて……」

ため息をついて、顔を上げた。


俯いてると……泣きそうだったから。



その時、次の授業開始を知らせるチャイムが響き渡った。



「授業、始まっちゃうよ?」

「お前だって行く気ないだろ?」


お互い顔を見合わせて、クスッと笑う。


「でもここじゃ、マズくない?」

「……そうだな。部室、行くか」

「埃臭いのヤだー」

「わがまま言うな」


また琢磨の後ろを歩いて、バスケ部の部室に向かった。





適当に言ったつもりだったのに、部室は本当に埃っぽかった。



「ちゃんと掃除してんの?」

「……お前、うちのマネージャーに怒られんぞ」


部屋の真ん中に並んで置かれたベンチに座った。


「あいつのこと好きなら、信じて待っててやれよ」

「琢磨……」


「ダメんなったら、俺んとこ来ればいいし」

「……本音はそこ?」


「バレたか」

茶化して言ってるけど、琢磨が心配してくれてるのはわかってた。



「……ごめんね、心配かけて」

「ホントだよ。俺はお前のお守じゃねぇっつーの」



……琢磨を好きになってたら、こんなに苦しい思いはしなかったのかな。


でもね、どんなに苦しくても、やっぱり圭吾じゃなきゃダメなの……。