「ごめん、お待たせ」


一階に降りると、下駄箱に琢磨が寄り掛かっていた。


「……大丈夫か?」

「ん、ごめん」


──琢磨が困ったような顔をしてるから、私、ちゃんと笑えてないんだろうな。





琢磨と並んで校門をくぐる。


「会ってないの? あいつと」


うちの生徒が少なくなってきた時、それまで黙ってた琢磨が口を開いた。


「ん……。しばらくは外で会わない方がいいって」

「……だから言ったじゃん」


「え?」

「辛い思いするって」


──そうだったね。


琢磨は最初からそう言ってたね。


私もね、ちゃんとわかってたんだよ。


覚悟も出来てるつもりだった。


でも、実際こうやって離れてみたら、想像してたよりも辛かった。



それだけ圭吾のこと、好きになったみたい。



「でも……頑張るよ」

「バカだな、お前」



──気が付いた時には、抱き締められていた。


笑顔を向けたつもりだったのに……。



「泣かされてんじゃねーよ」