「はい、コーヒー」
「あ、ありがとう」
座っている私に合わせて少し屈んだから、サラサラした前髪が顔に影を作った。
二人でいる時、圭吾は前髪を下ろし、メガネを外していることがほとんど。
学校での姿は、圭吾の言葉を借りるなら「生徒にナメられないための武装」らしい。
──久我っちって言われちゃってるけど。
バイトがなくて圭吾が早く帰ってくる予定の日。
私達は圭吾の部屋で一緒に過ごすことが多くなっていた。
学校がある日はちゃんと帰って、次の日が休みの時はたまに泊まったり。
“我慢させるかもしれない”って言ってたけど、普通の恋人同士みたいな時間を過ごしてる。
今、圭吾が観たかったという映画のDVDを一緒に観てるんだけど、私の頭の中は圭吾の誕生日プレゼントのことでいっぱい。
「……どうした?」
「えっ? 何?」
「何かぼーっとしてるから。……つまんない?」
「違うのっ……」
あまりに考え過ぎて、圭吾が話し掛けてることに気が付かなかったみたい。
「あのね……誕生日、もうすぐじゃん?」