顔を上げると、涙が込み上げて来た。


好きだから、頑張れるよ。


頑張るから。

我慢するから。

だから──。


カタン、とメガネを机に置く音がして、

「……好きだよ」

キスをひとつくれた。





「……ところで、帰る所だっただろ?」

「……あっ、バイト!」


バイトのこと今まですっかり忘れてた。


「何時まで?」

「9時」


「じゃあ、終わったらうち来いよ」

頭をぽんと撫でて私から離れると、圭吾はコーヒーを淹れ始めた。


「えっ……でも」

そんな時間から会ったら帰るの遅くなっちゃうし。


……帰らなくてもいいのかな?


「すぐ帰すし。……何? 泊まるつもりだった?」

「……バカッ!」


圭吾はカップを持ってケラケラ笑っていた。

「気を付けて帰れよ」


「……はい」





周りに大切な友達がいて。

すごく好きって言える人も出来た。

家族を失くしてから、こんなに幸せって思えること、なかったよ。



だからずっと、この手を離さないで──……。