「皆。ちょっと聞いてくれんかね。」
ざわついた6年生の教室に、担任の小出の声が響いた。
「どしたん?先生。」
「…着いて来んさい。鞄も、お道具箱も全部持って。」
生徒達は、小出の指示に従った。
そして、着いて行った。
外は酷く土砂降りだった。
ザーザーと、雨の音が響く。
生徒達と、小出は、傘をさして山のほうに歩いていった。


少しすると、洋館が見えてきた。
「此処じゃ。来て欲しかったところは。入りんさい。」
ギィィ…と、重く冷たいドアを、小出が開けた。
生徒達は、何も知らずにゾロゾロと、明かりの灯った洋館へ入っていく。
そして…


バタン!!ガチャ…

「ひぁっ……今の音、何?」
「…先生がおらん……先生!先生!」
ドンドン、と、外から鍵をかけられたドアを生徒が叩く。

『皆。仕方無いんじゃ。…ゴメンなぁ。どうか、生き延びてや。』
そう言い残して、小出は去っていった。

「……閉じ込められたん…?ウチ等…」
「どうしよう…嫌じゃ…帰りたい!」
「女子落ち着けって…。」
「けど…けど…っ」
慌てるクラスメイトをよそに、凛々しい声が響いた。
「静かに。…聞いて。こんなものが置いとった。」
皆を静めたのは、井垣真理恵だった。
そして、一枚のメモ用紙を皆に見せた。
「…読むけん。よく聞いとって。」
すぅっと息を吸って、真理恵は淡々と文章を読み始めた。
「鹿御小学校6年生の皆様 ようこそ。いきなり閉じ込められて、どういう事か、状況が 読み込めていないことでしょう。今から皆様には、ある『試練』を受けていただきま  す。皆様の絆がどれ程のものかを試す試練です。今から、皆様に、此処を脱出していた だきます。此処は、多くの謎がある「鬼の洋館」です。その謎を、全て解いていただき ます。食料・寝床・風呂などの生活用具は揃っております。館内の地図は、常に壁に貼 っておきます。そして最後に。………殺してしまうという選択肢もあることを忘れない で頂きたい。それでは皆様。頑張ってください。」