忘れるわけがない。
男は思う。



今、女の子が生きていた痕跡は
壁に刻まれたこの名前だけになってしまったが



男の心の中には
永遠に女の子は生き続ける。





男はつぶやく。




「もう会えないけど…
俺たちはいつでも一緒だ…」



地下室から外に出ると
もうすっかり日も暮れて夜になっていた。



男はハンカチで何度も顔をごしごしと
拭き


そして一言つぶやいた。




「行こう…」




男の姿が消えた公園では
あの塔が今でも建っている。




人々の生きた痕跡と共に。