「…………………困った」



キーを持っていなかった。オートロックというものをすっかり忘れていた。戻って来たはいいが中へ入れない。



「仕方ない………」



扉をドンドン叩いてみた。応答なし。インターホンを何度も押してみた。……応答なし。大声で呼んでみた。………応答なし。また何度か扉を叩いてみた。…………応答……あり?ようやく扉は開いた。



「あッッ!やっと開いたッ!」



そこには マジギレ寸前の殺気立ったゼファの姿があった。



「ごめんね起こして」
「………それから?」
「え………?……勝手に出てってごめんね?」
「………他にはッッ!?」
「???勝手に遊びに行ってごめんね?」
「遊んでただと………?」
「うーん……じゃあ、ソファで寝させてごめんね?」
「ちがーうッッ!!」
「……ごめん…何?」
「………いきなり寝ちゃってごめんねだろ!?」
「…………あ……。ってか、それだけで怒んないでよ!」
「はぁー………。でも1回外に出てまたここに帰って来て良かったよ………」



ゼファが憎まれ口をたたかなかった。 こんなことってあるんだ。ポンとあたしの頭に手を乗っけて安心した様にあたしを部屋の中に入れた。



「ゼファ。怒らないの?」
「………ちゃんと帰って来たから許す」
「変なの……」
「何が?」
「なんか調子狂う」
「だから何がだよ?」
「ゼファが優しいのなんか気持ち悪い」
「……いつも優しいだろ!そんな不満かよ?」
「不満じゃないよ。不満じゃないけど……」
「もぉいいよ。めんどくせぇなー」