逃げたわけではない。 これから居住区に異端者の目撃情報があったという事でそれの調査に行かなきゃいけないんだから………。ホントに逃げたわけではないんだから!それはそうと、まだ女逹に囲まれたあの男の前を通らなきゃならないのが非常に胸クソ悪い。気づかれないように通らなければ……。



「もぉー!メールくらい返しなさいよぉ!」
「この前の埋め合わせはいつしてくれるのぉー!?」
「……あー!もううるせぇうるせぇッッ!………ん!?あ!イセルナイセルナ!」
「………………」
「オィッ!どけお前ら!」
「キャッ!何よぉーッッ!」
「イセルナ⁉」



逃げろ逃げろ逃げろ………。



「逃げないで助けてくれよー!見てみぬふりをして逃げるとかひどすぎだろ!」
「…………あんたのアレは自業自得でしょう」
「んー………まぁな。でもお前が通ってくれて助かったわー!」
「人を使うなバカ!気安く触んないでよ!」



ゼファはあたしの肩を抱いて歩いて行く。
背後ではあのうるさい女逹があたしに向けて罵倒の嵐を撒き散らしていた。でも、もうこのシチュエーションにも慣れてしまった………。慣れというのは恐ろしいものなのかもしれない。