真っ赤な顔を背けた彼は、私のことを嫌いではないと言った。
ちょっと意外。
こういう彼なら嫌いじゃないと思えた。
初めて彼、西野旭に会ったのは高校一年の夏。
私は彼が嫌いでした。
格好いいとかみんな言うけど、私はそう思えなかった。
だっていっつもヘラヘラしてて、女ったらしだし。
明るくていつも人の集まる中心でうるさいし、サボリ魔。
なのに成績はいつも上位。
カンニングでもしてるのかとさえ思ってた。
「あの、すいません。西野旭いますか?」
私は見知らぬ女の子に呼ばれて振り返った。
「1年の萩原柚って言います。旭の妹なんですけど、財布忘れてったみたいで…。」
そう言って私に財布を渡して貰えないかと頼んできた。
私は彼とは話したことも話そうと思ったこともなかったので、渋々引き受けた。
「そういえば、名字…。」
「あぁ、私たちの両親離婚しちゃったんで違うんです。」