「え〜なっ!
化学の教科書貸して」



声がする教室の入口には

いつもの執汰が立っていた


昨日の寂しい目ではなくて
いつもの元気な執汰の

キラキラした目だ


「いい加減持っておいでよ〜
はい、どうぞ」


「ありがとよー
こうやって笑和が
元気かどうか見に
来てるんだからなあ」


そう言って私の頭を

なでてから教室を出て行った


私の気持ちは

執汰にとられていく

糸も簡単に


なのに執汰の好きな人は

私じゃなくて


執汰の近くにいない人