あの一件から程なく、私は大学生になった。

自宅から通える大学の理学部。

得意な化学を生かせるし、何より手に職をつける事が目的だった。

同じ高校から同じ学部に入学した人は誰もおらず、少し心細いスタートだった。



「リョウ、今日の新歓コンパ一緒に行かない?」


今思えば、この言葉がずべての始まりだったと思う。

新作のシャネルのトートを右手に持ち、左にはキラキラのストラップがたくさんぶら下がった携帯をもった美里。

誰がどう見ても派手好きなこの子は、入学して間もなく話しかけられたことで友達になった。

東京の開業医の娘だという彼女は、よく言えば自身に溢れていて美人。

皮肉って言えば、ただの自己中のケバイお嬢様。

そして気さくな性格のためか、彼女はグループの中心人物だった。

私は、無数に存在する輪の中で、当たり前のように美里のグループの中の一人だった。


「うん、行く」


私は満面の笑みで答えると、指に挟んだタバコに火を付けた。

別に友達を増やしたいから行くんじゃない。

とりあえず、誘われたから行っておいたほうがいい。

心のどこからか発せられたサインに従っただけ。