「何があった?」

「偶然、彼氏の彼女の日記を見つけたの」

「彼氏の…彼女?」

「うん。彼氏の彼女」

「え?オマエは?」

「私は――何だろうね、分んない」

視線は前を見つめたまま、変な話でしょーと肩をすくめて笑う。

「なんかねー。負けたわ、無理」

「何が?」

「大好きオーラが溢れてる」

それに―――

「子供堕ろしてたわ、彼女」

「は?」

「彼氏の未来の為に、将来会いましょうねって堕ろしてた」

「何だそれ、意味ワカンネ」

彼氏の夢を潰さないように、自分の体を犠牲にしてたのよ。

そう言うと、昌斗は私の顔を見つめたまま黙りこんでしまった。

「別れよっかな…」

その言葉を吐き出すと同時に、一気に涙が溢れ出す。

また私は一人に戻るんだ…。

私は翔なしじゃ、もう生きられないのに?

大丈夫。

これまでも一人だったじゃない。

こうやって駆けつけてくれる昌斗もいる。

昔に戻るだけだ。

そう思おうとしても、さっきまでいた暖かな部屋が、抱きしめられた翔の温もりが体から離れない。

それは、別れることを躊躇う程の手放したくないものだった。

でも……

彼女と翔が誓った幸せは…ウソじゃないんだよね。

私は、邪魔者でしかない。

赤ちゃんがかわいそうだ。