長い沈黙の後、俯いた私から出たのは「まいったなぁー」そんな短い台詞だった。

翔は真剣な表情のまま、私の口から発せられる次の言葉を待っている。

「翔、いつもそうやって女の子くどいてんのぉ?」

あぁ・・・

ホント、かわいくないな私。

ここで「ありがとね」の一つでも言ったら高感度上がるのにさぁ。

私は俯いたまま笑顔を作り、そしてそのまま顔を上げた。




「はぁー?」

何だよお前、と叫ぶ翔。

眉間には怒りのシワが深く刻まれている。

「一人でボーッとしてたいの。悩みなんてないってば」



うそ。

傍にいて欲しい。

誰でもいいの。

私の傍にいてほしい。


ねぇ、教えて。

私は、どうすればいいの…?

でも―――言わない。




翔は半ば呆れた顔で私を見ていた。

心配してやったのに、何だよコイツ、とでも思ってるのかな。

それでも…仕方ないか。

人を信じるのは疲れる。

このまま深入りしなければ、今まで通り友達のままで笑いあえるよね?


翔は、しばらく黙って私を見つめた後、急に立ち上がった。

それがあまりにも急だったので、座ってたベンチがはずみで大きな音を出す。

「危ないじゃん!」焦って見上げた私の頭に振り下ろされる手の平。

それは叩く訳でも撫でる訳でもなく、頭のてっぺんで止まった。

そして「素直じゃねーなぁー」と呟くと、私の顔を見ることなくエレベータホールに向かって歩き出した。

私はその背中を唇をかみ締めながら見つめる。

悲しいのか悔しいのか。

次々に溢れ出た涙は、その答えを探すように頬を流れ続けた。