何でそうなる。百歩譲ってアップルティーが好きなのは認めるが、林檎が好きだとは言った覚えはない。
しかしおめでたい片山の脳ミソは何故か私の言葉をそう変換して、至極甘い笑顔を投げ掛けてくる。
「いや、だからさ」
「僕も更沙って呼ぶから」
だから人の話を聞け!
そうツッコミをいれようとした瞬間、口に何かを突っ込まれた。口の中のそれは滑らかで、反射で飲み込んでしまうのに支障はなかった。
そして口の中にじんわりと広がる甘い味に、それが私の持っているプリンだと気付く。
「ね、更沙」
美味しい?とプリンと同じような甘ったるい笑顔で訊く片山に、苦笑しながら頷いた。
林檎なんてまださらさら呼ぶ気はないけど、好きな紅茶味に免じて呼び捨てくらいは許してやろうかな。なんて考えた自分の甘さに苦笑。好きなもののパワーはびっくりするくらい強い。
そしてそんな事を考えさせた目の前の片山林檎という人物に、少しの抵抗としてポケットの中の飴を突っ込んでやった。
