「賀田桐さんって紅茶好きだよね」
楽しそうにスプーンを弄びながらプリンを食べていた片山が唐突に訊ねてきた。ああ片山にその話題を振られて目を輝かせるのは不本意だけど仕方ない。
「大っ好き。ミルクで飲むならアールグレイ、ストレートならダージリン、フレーバーならアップルって決めてるの」
「へえ、フレーバーならアップルなの?」
「うん」
すると片山はにっこり笑って、目眩のするような台詞を吐いた。
「アップルって、林檎じゃん。何か僕って言われてるみたいで嬉しいな」
絶句。勿論そんな意味で言ったわけではない。しかもこいつが林檎という名前だと意識した事もないわけで。
だって普段はお互い名字呼びだし。
「いや、別にそう言う意味で言ったんじゃ」
「折角だからさ、賀田桐さん僕のこと林檎って呼んでよ。ほら、林檎好きなんでしょ?」
