Tシャツ越しに、片山の鼓動が伝わってくる。
とくんとくんと、一定のリズムを刻むそれ。少し速い鼓動の音につられるように、私の鼓動も速くなる。同じ速度の心音が混ざって、まるで一つに溶けたみたいな。
私が片山の背中のTシャツをきゅっと掴むと、腕に更に力が込められた。
「片山、緊張してる?」
「そりゃ、ね。まだ返事ももらってないし」
拗ねたような声を出して、頭を羽交い締めにされた。片山の腕にすっぽり収まってしまうのが悔しい。身動きがとれないじゃないか。
私が片山の腕を叩くと、ゆっくりと力が緩まる。顔を上げるとにっこり笑った片山と目が合った。
「ね、更沙。返事は?」
甘ったるい笑顔に甘ったるい声。ああいつもの片山だ。