私が眉を寄せると、片山が呆れたように溜め息を吐いた。そのまま掌で前髪をぐちゃぐちゃと掻き回す。


「あぁもう。まさか届いてないなんて思ってなかった。君って意外と鈍感なんだね。ねえ、更沙」

「何よ」

「もう、待つのはこりごりだよ。くたびれちゃった。限界だ」


 視界がブラックアウトしたと思ったら、そこは片山の腕の中だった。ぎゅう、と腕に力をこめられる。


何が、と言い返す前にまた片山が話し始めた。


「もういいや。面倒くさい。更沙、よーく聞いててね」



「君が、好きだよ」



 視界が、今度は一瞬で真っ白になった。片山が?片山が、私のこと。って、え…本当に?


「ほん、とに?」

「本当も何も、僕がこんなに構う女の子は更沙だけだよ」


 驚きすぎて息が詰まった。まさかあの奇人変人片山が。性悪だとしか思ってなかった片山が。


 驚いた私の顔を覗き込んで、片山は笑った。そして、片山はもう一度私に言った。耳元で、囁くようなあの甘ったるい声で。


大好きだよ、と。