隣で寝息をたてる親友を気遣いながら、少しだけ距離をとった。
「はい」
「君、名前は?あ、俺は唯斗。よろしく」
人懐っこい笑みを浮かべる茶髪。その笑顔に少しだけ安心して身体の力を抜いた。もう随分こんな純粋な笑みを向けられてなかった気がする。
だっていつも側に居るのはあの片山だし、親友だってどちらかというと腹黒。その癖まわりの女子は片山目的が見え見えな笑顔で近付いてくる。男子は片山が近付けない。だからこの唯斗とかいう茶髪の男の笑みに、酷く癒しを感じた。
「よろしく。私は更沙。賀田桐更沙って言うの」
「更沙か。可愛らしい名前だね」
またさっきみたいな笑顔で、茶髪は笑った。本当に新鮮な笑顔。片山や隣で酔い潰れた親友みたいに、真っ黒でへらりとした笑みじゃない。
「俺の事は唯斗って呼んで。更沙でいいかな?」
「うん、いいよ」
それから唯斗は酔い潰れた親友を一緒に介抱してくれたり、私の為に座る位置を交換してくれたり。(親友が凭れかかってくるから重い)
