片山への想いを完全に自覚してから、私は私じゃなくなった。今までは眼中にさえなかった斜め前の片山。無造作に跳ねた後ろ頭の淡い茶髪を見つめる。相変わらず授業中に怪しげな本を読んでいる。


以前ならそんな片山に殺気を飛ばしていた筈だ。なのにこの甘ったるい視線は何だ。乙女か私は。恋する乙女なんて柄じゃない。


取り敢えず今日もへらへらしたオーラの片山を睨んでみた。




「ねーねー更沙。合コン行かない?」


「…は?」


 昼休み、珍しく片山に連行されなかった私は友人と机を囲んで昼食を摂っていた。そんな友人の口から出た言葉に絶句する。何も言えない私の変わりにフォークに突き刺した筈のプチトマトが落ちた。


合、コン?


「お隣の滝山とー。あそこ男子校だけど、レベル高いって有名じゃん」