Mr.Kの恋




 片山は見事に寝る前の事を忘れていて、勿論私にキスした事なんて覚えていなかった。ふざけんじゃねえこの変人。と怒鳴って帰って、少しは反省したかと思ったらこれだ。


いや、あっちはキスした事すら覚えてないんだから何をどう反省するのかも分かんないけど。


「もしかしてカスタードプリンは嫌いだった?なら抹茶プリンもあるけど」


「いらない。私プリンよりゼリーのが好き」


「そうかな。美味しいじゃんプリン」


プリンに角砂糖放り込む甘党舌バカなお前に好みをどうこう言われたくない。大体ただでさえ甘いプリンに角砂糖なんてくどすぎて逆流もんだ。


そんな私の角砂糖プリンで侵された思考を知ってか知らずか、片山は意外におとなしくプリンを下げた。心の中でひっそりガッツポーズを決める。だってあの奇人変人片山林檎に勝ったんだよ。普段振り回されてるんだからガッツポーズくらい許してほしい。


「ねえ賀田桐さん?」


「は?何よ」


一人勝ち誇っていた私に満面の笑みを浮かべる片山。その甘ったるい笑みから零れた言葉は悪夢のようだった。