片山林檎は、奇妙しな奴だった。いつもへらへらした笑みを浮かべていて、奴の話は大抵どこか虚無をついていた。全身で空気を体現してるような奴だった。
そんな彼に、唯一親友と呼ばれているのが一人だけ。奇人の彼の親友も奇人。そんなレッテルが貼られるのが目に見えている為、かなり全力で親友の座を辞退するのがこの場合の正しい対処法。の筈なのだが片山林檎は見掛けによらず頭が良いらしく、頭が算数レベルな私を見事言いくるめた。
そして今も彼の親友というポジションに甘んじて座らされてるのが、この私なわけである。
「賀田桐さん、今日は苺プリンだよ」
「…片山ってほんっとーにプリン大好きよね」
「あ、黒革」
「人の話聞けよ」
放課後の図書室に拉致されるのが日常になった頃。これまたひょろ長い見掛けによらずプリン好きな片山は、プリンを掬ったスプーンを口にくわえて本棚を漁る。
そして私との会話を半ば無理矢理中断した片山は、めぼしい物を見つけたのか、細長い指が一冊本をするりと抜いた。