危険な彼女

「まだわからないの?



私がパパに言えば、あなたのお父様なんて…一発でクビにできるのよ?」



「………はぁ!!?」




奈津は驚きのあまり唖然とした。



まさかこんなことで親父が職を失う…?


嘘だろ?




「さーてと、
パパに電話電話〜♪」



「ちょっ………
ちょっと待てぇ!!!」



奈津は携帯を取り出した彼女に待ったをかける。



彼女は一応待ってくれた。




「なにか?」



「た、頼む…

それだけはやめてくれ!!!」




奈津は冷や汗がこめかみを伝うのを感じながら、必死に作り笑いを浮かべた。



それに対し、彼女は悪魔のような笑みで、奈津を見つめた。



奈津は、若干びびりながら、次の言葉を待った。




「………なら、
あんたはどうするの?

お父様のクビがかかってるんだから、それなりの態度があるわよねぇ?」



そう言って彼女はニコリと笑った。



かわいい。


かわいいが憎たらしい。



奈津は、歯をくいしばりながら、彼女に言った。




「俺はどうなったっていいから…

だから、親父をクビにするのはやめてくれ」




この時、こんなこと言わなければ、ああはならなかっただろう、と今でも奈津は悔いている。



奈津の後悔は海より深い。