危険な彼女

「好きだから………だよ」



「………!」




笑みを絶やさない亜紀が、奈津にはとても痛々しく思えた。




亜紀は、こんなにも強かっただろうか。



いつもびくびくしていて、自分の本音を言えなくて、誰かのそばにいるような…



それだけは、桜と同じで………




「好きだから…なっちゃんには幸せになってほしいんだ…」




「そんな…俺は、亜紀を………」




「私…もう泣かないから…!

もう、びくびくおどおどしないから…!


………だから…行って?」




「亜紀…俺…俺………」




足が動いてくれない。



どうしても亜紀の顔から目が離せなくなってしまった。




見かねた亜紀は、奈津を反転させると、そっと背中を押した。




「ほら、女の子を待たせちゃいけないんだよ?

早く行かないと!」