危険な彼女

ふいに亜紀が微笑んだ。




「そっ…か………」




変わらない声。



笑った顔。



すべてがいつもどおりの亜紀で、奈津は驚いた。




「なっちゃん…私たちが初めて会ったときのこと覚えてる?」



「え…?

あ、ああ………」




亜紀はゆっくりと奈津に近づいてきた。



そして、手袋をつけた両手で、奈津の手を握る。



亜紀の手はとても小さく、寒さからか、少し震えていた。




「私、泣いてたよね…

そんなときに、なっちゃんは私にこの手を差し伸べてくれた」




「………そう、だったな」




「それからはいつだってそばにいてくれた。

助けてくれた。

私の手を引いてくれた…」




亜紀の表情が、切なげな表情に変わる。



握られた両手に、少し力が入った気がした。