危険な彼女

「………桜ちゃん?」




亜紀に先に言われてしまい、奈津は小さく頷いた。



そして、亜紀の顔をまっすぐに見ながら言葉を紡ぐ。




「あいつはたしかに、わがままで、強情で、世間知らずで、暴力的で、かわいらしさなんてあったもんじゃない女で………」




「……………」




「でも………

本当のあいつは臆病で、弱気で、いつも自信なんてなくて、泣き虫で、寂しがり屋で………」




「………うん」




「誰かが支えてあげなきゃいけない、そんなやつなんだ…」




奈津は少し寂しげに言った。



それに対して、亜紀は問いかけるように言った。




「なっちゃんは桜ちゃんが好き?」




「………ああ。

あいつのそばにいてやりたい。




………ちょっと違うな。

俺があいつのそばにいたい。

桜がそばにいてほしいんだ」




奈津は少しも躊躇うことなく、落ち着いた様子で言い切った。