危険な彼女

「桜………俺………」




絞り出すように声を出すと、桜は頬に当てていた手を今度は耳に当てた。




「嫌っ!!!

聞きたくない!!!
何も聞きたくない!!!」



「違っ…俺は………」



「嫌っ!!!

絶対聞かない!!!
聞いてなんかあげない!!!」




奈津の言葉なんて耳に入っていなかった。



ただ、ひたすらに奈津の言葉を拒む。




「…………」




もしかしたら、桜は自分に好きだなんて言うつもりはなかったのかもしれない。



奈津の態度に、不安を感じ、どうしようもない気持ちをぶつけてきただけなのかもしれない。




だから…返事を聞くのを拒む。




「〜〜〜っ!

私、帰るから!!!
何も聞かないんだから!!!」




そう言い残し、桜は走り去る。




それを止めようとした手は………


のびてはくれなかった。