危険な彼女

桜は静かに奈津に近づくと、倒れるようにゆっくり奈津の胸に頭をあずけた。




「奈津………何だか………苦しいよ………」




奈津の胸に、問いかけるように桜は言った。



そんな桜の言葉に、奈津は固まり、何一つ行動できなかった。



優しい言葉をかけることも、抱きしめてやることも、今の奈津はしてやれなかった。




「怪我なんてしてないのに………

すごく…痛い………

痛いよ………奈津………」



「………っ!」




ごめん、と言いたかった。



普通にしてやれなくてごめん、と言いたかった。




でも、体がそうさせてくれなかった。



ギリギリのところで、亜紀の顔が脳裏をよぎり、それをさせてくれなかった。