危険な彼女

「で、デートなんかじゃねぇ!!!」



「照れない照れない。

若いうちはたくさん経験しておくものよ♪」




握っていた拳が力なく開いていく。



彩芽の言葉はいちいちかんに障り、妙な力がある。



まじめに相手にすると、たいてい自分が負ける。



しかも、かなりの精神疲労をともなって。




「とにかく…デートなんかじゃねぇから」




そう言い残し、奈津は靴をはいた。



夕方は寒くなるだろうから玄関に置いてあるマフラーを首に巻いていく。




「デートじゃない…か………

桜ちゃんが聞いたら泣いちゃいそうね」



「は?」




相手にしない。



そう決めていたのに、振り返ってしまった。



彩芽は本を置き、ゆっくりと眼鏡を外した。




「だってそうでしょう?

意識の差ってね、恋愛において一番きついのよ」