少し落ち着いてから、奈津は自分の手のひらに視線をうつした。



意味はない。



ただ、この手でできることは何だろうと考えていた。




「……………」




自分は何ができるだろう。



亜紀と桜。



自分のことを好いてくれている二人の女の子。



両方を幸せにすることなんてできない。



この右手は一人の人間の手しか握れないのだ。



片方の人間を悲しい気持ちにさせる、確実に。



そして、答えを出せない今、確実に亜紀を苦しめている。



もしかしたら桜も苦しんでいるのかもしれない。




「………答え、出さなきゃな」




結局、今の自分にできるのはそれだけ。



そして、その答えが出るのはそう遠くないように感じていた。




要は、自分が決める、ただそれだけなのだから。




「俺は………」




奈津はグッと拳を握りしめた。



そして、答えを出す、その決意をより強くするように、うしっ!、声を出すと、自分の部屋を後にした。