危険な彼女

教室に入るなり、亜紀はびくびくしながら奈津の元へ向かった。



だが、その足はゆっくりと失速していく。


今一度、よく見ると奈津の友人である春がいたのだ。




「ん?
亜紀、どうかしたか?」



バシッ!



「アホ、まずは『おはよう』ってゆうんが普通やろ?」



春が奈津の頭を叩き、さも当然というかのようにニヤニヤ笑う。


実は、この水谷春という男、何に関しても手加減というものを知らない。


そのため、あまりの痛みに、奈津は涙目になりながら春を睨み返した。



「「………!」」



そんな奈津の視線に何を思ったのか、春はもう一度奈津を叩いた。




――二人とも仲良しでいいなぁ…




誰がどう見てもひどい状況にも関わらず、亜紀の目線からはとても仲よさ気に見えたようである。




「で…どうしたんだ?」




痛々しい表情を浮かべながら、奈津は亜紀にたずねた。



「え、えぇえっとね………

い…いいいいっしょに………!」



――ああ、
あんなに練習したのにぃ………

いざ、なっちゃんを目の前にすると言えないよぉ………

それに、春君もいるしぃ………





「………亜紀?」



「ひゃっ!!」




奈津の言葉で、亜紀は今まで出したことのないような声を出し、一気に赤面した。