危険な彼女

慌てた様子の桜はか細い声で言葉を紡いだ。



「だ、だって…と、遠いらしいし………

一応付き合わせたわけだし………」



「え…?」



一瞬、耳を疑った。



「ち…違うわよ!

え、えーっと…そ、そうよ!

あんたの後ろ姿があまりにみすぼらしかったから、かわいそうに思ったの!!」



「そ、そうか………」



そう答えつつも、何となく桜の意図はつかめた気がした。


桜は案外………



「な、何よその顔は!

これ以上、詮索するようなら今すぐ車から突き飛ばすわよ!?」



「はいはい………」



桜ならやりかねない。


奈津は、やや視線をずらしながら返事をした。



正確な理由が分からないのは納得いかないが、これ以上聞くのは自殺行為。


何にせよ、乗せてくれたことには素直に感謝すべきところなのかもしれない。




「とりあえず…ありがとな」



奈津は初めて桜にお礼を言った。


すると、桜は少し頬を赤らめる。




「べ、別にお礼なんて…」



「でも、一応の礼儀だろ?」



「………ど、どういたしまして」




そう言って桜は窓の外に視線を移した。



まだ、ほんのりと頬は赤くなっていたのを不思議に思いながら、奈津も窓の外に視線を移した。