この感情は何なのだろう。



怒りたいわけではない。



もちろん、殴りたいとか蹴りたいとか、ボコボコにしてやりたいだなんて、常日頃から思うはずがない。





…でも、イライラする。



他の女の子と楽しそうにしている奈津を見ていると、無性に腹が立つのだ。




「桜ちゃん、その気持ちの正体、教えてあげよっか?」




その言葉に、桜は少しためらいがちに頷いた。




「それはね、やきもちって言うの」



「やきもち…?」



「男女問わず、誰でも抱く感情よ。

それは恋愛感情であり、愛情であり、ときには友情の延長にもなるの」



「それが何で私に…?」




桜の疑問に、彩芽はクスッと笑った。




「好きな子や気になる子に、自分だけを見てほしいって思うのは普通でしょ?

桜ちゃんも、奈津にそう思ったことない?」




桜は首を縦にも横にも振らなかった。



代わりに、エプロンの裾をギュッと握りしめる。