危険な彼女

奈津は、自分が入る場はないと悟り、部屋へ戻ろうとした。



しかし、その足はすぐにとまることになる。




「なんじゃ、奈津。

帰ったら帰ったって言わんか」




タイミング悪く、祖父が帰ってきたのだ。



そういえば今日は道場休みだったな、と奈津は今さら思い出した。




「じ、じいちゃん………」



「ちょうどよかった。

最近稽古しとらんかったじゃろ?
今日はみっちり鍛えてやるぞ」




ガン、と後頭部を何かで思い切り叩かれた気がした。



予想がこれほど的確に当たるのはどうなのかと、奈津は少しブルーな気持ちになった。





奈津の祖父は武術道場の師範。



もちろん、孫である奈津は昔から稽古に付き合わされている。



しかし、これは本人の意志ではない。



結果的に武術が役にたっているとはいえ(亜紀のこと)、正直、奈津は武術はあまり好きではない。



普段から体を痛めつけられているのに、何故、さらに痛めつけねばならないのか。



それ故、奈津は祖父との稽古にあまり賛同できなかった。