危険な彼女

無言のまま、すでに10分が過ぎていた…



桜は何も言わないし、奈津も何も言わない。



いつもと何かが違った。

空気というか………

雰囲気というか………



まとめて言うならば、とにかく気まずかった。




「あんたの家ってどこ?」


「え?

あぁ、あと20分くらいかな?」



「へぇ………


本当に遠いのね」



――その距離を徒歩で帰らせようとしたのはお前だぞ?



そう言おうとしたが、そこは言わないでおく。


奈津は乗せてもらっている以上、下手なことは言えない。



というか大前提が逆らったら親父がクビという法治国家の日本の崩壊みたいなものなのだ。


誰がわざわざ桜に反論などしようものか。



「感謝しなさいよ?

わざわざ遠回りしてまで送ってやったんだから」


「………どうも」



「感謝が足りないわね。

犬語でありがとうって言ってみて」



「んなことできねぇよ!!

てか、犬の言葉がわかるか!!」



「そうなの?

うわあ、意外だわ…」



「本気で意外そうな顔してんじゃねぇ!!」