危険な彼女

徐々にだが、奈津はゆっくりと男に近づいていった。




「と、止まれ!!!

聞こえねぇのか!!?」




亜紀の首に腕を回し、ナイフを奈津に近づける。



圧倒的に自分が不利な状況にも関わらず、以前、表情を変えない奈津を不気味に思ったのか、男の表情に再び焦りが見え始めた。



そんな男を見て、奈津は無表情のまま口を開いた。




「…一つ、いいこと教えてやろうか?」




奈津はまた一歩前に足を進めた。




「な、何だよ…!?」




男の表情がさらに険しくなった。



自然と、男の手が震え始める。




「昔からなぁ………

亜紀を泣かせるやつは………」




その声に合わせ、一足飛び。



前蹴りで男のナイフを弾き飛ばし、着地を待たずして逆足を男の顎へ向ける。




「俺にぶっ飛ばされるって決まってんだよ!!!」




その言葉通り、男は顎をかち上げられ、後方へ倒れた。